一日一善 人にやさしく

今日は一日、雨、雨、雨。


結局朝から晩まで雨だった。


止むことを期待して、折り畳みで出掛けたがびしょびしょだ。



朝の電車は、少し早めにでたせいか若干空いている。

でも、床はびしょびしょだ。カバンを網棚に上げて、雑誌を折り曲げて読み始める。


トントン。


トントン。


と左手を誰かが叩く。

ん?なんだ? と振り向くと女の子がはにかみながらこちらを見ている。

小さい声で「これあげてもらえますか?」という。

両手でバッグを持っている。大きな黒いボストンバッグ、ナイロン製の安物だろう。たて1m、深さ0.5mほど。



女の子はフリーター?専門学校生?短大生?そんな感じの娘だ。

髪は金色に茶色のメッシュが入った、ぱさぱさのアシンメトリーのボブ。

インドア系の色の白さ。ジーパンの上からスカートを穿く、そんなファッションの女の子だ。

身長は150cmくらい、網棚に大きなカバンを上げるのは無理だろう。


床は折からの雨でびしょびしょ。ココには置けないなぁ。


「いいよ。」といい、ぐいっとカバンを持ち上げる。

思ったより軽い。カバンにはカラフルな髪留めが何個もついている。

美容師の勉強でもしているのかな?と邪推しつつもカバンを引き上げる。

網棚に縦に収めようと思ったが、カバンが大きすぎたので、横に直して収める。



見上げがちに「ありがとうございます♪」という。



俺は「どういたしまして」といい、雑誌に戻る。

女の子はおもむろにおにぎりを食べ出す。

ようわからん。フフン♪と鼻を鳴らしそのまま電車に揺られる。



そのまま俺の降りる駅に電車が滑り込んだ。


俺は途中で降りたけど、女の子は無事カバンを降ろせただろうか?


一言掛けてあげれば良かったかな?




ちょっとだけ、『人にやさしく』できた瞬間だった。





やさしさだけじゃ 人は愛せないから
ああ なぐさめてあげられない
期待はずれの 言葉を言うときに
心のなかでは ガンバレって言っている
聞こえて欲しい あなたにも
ガンバレ!

 The Blue Hearts 『人にやさしく』より